『明智光秀』

 

小和田哲男 著

PHP研究所 刊

平成12年5月6日(初版)
238ページ 657円

評 価
★★

著者は1944年静岡県生まれ。早稲田大院卒、静岡大教授。著書に『桶狭間の戦い』『三方ヶ原の戦い』『戦国合戦事典徳川秀忠』『石田三成』『戦国武将』など多数。
中世日本史の研究者として著書が多数あり、マスコミへの露出度も高く、この分野では第一人者とされている。

本書は、本能寺の変の首謀者である明智光秀の評伝を記したもの。

明智光秀の伝記本は、高柳光寿 『明智光秀』桑田忠親『明智光秀』がすでに刊行されており、小和田氏自身「両大家の研究を乗りこえるのがむずかしく思われてきた」ために、その執筆を躊躇われたという。
だが、最近の光秀文書の研究等によって、出版の突破口を得たとされる。

しかし、本書の内容は、枝葉末節にあっては新しいものも見られるが、大よそにおいて、先学の研究を超えるものとは言えないだろう。

著者は、「光秀謀反の理由について、高柳光寿氏の野望説、桑田忠親氏の怨恨説を否定し、新しく、信長非道阻止説というものを提起した」といい、これが本書の大きな売りになっている。

これなどは、結果ありきの論法、目的ありきの過程のように感じられる。新説を打ち上げることで、自身の研究者としての存在を残したいという伏意が垣間見られるような気がする。

この新説(光秀が朝廷のために勝手に謀反を起こした)について、藤本正行氏、鈴木眞哉氏は、「非道阻止などというイデオロギーにかかわる問題で、光秀が謀反を起こすことなどあり得ないことである」とし、【珍説】として片付けられている(『信長は謀略で殺されたのか 本能寺の変・謀略説を嗤う』 洋泉社、2006年)。

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