桶狭間の戦い

  -戦史ドキュメント-

小和田 哲男 著

学習研究社(学研M文庫) 刊
254ページ

2000年9月(初版) 567円

評 価
★★★

著者は1944年静岡県生まれ。早稲田大院卒、静岡大教授。著書に三方ヶ原の戦い』『戦国合戦事典徳川秀忠』『明智光秀』『石田三成』『戦国武将など多数。
中世日本史の研究者として著書が多数あり、マスコミへの露出度も高く、この分野では第一人者とされている。

戦国史の専門家らしく、史料に基づいて、丹念に記載している。

第1章 義元、西上の軍をおこす
第2章 尾張に侵入する義元
第3章 大高城兵糧入れと丸根砦・鷲津砦の攻防
第4章 清洲城を討って出る信長
第5章 義元討たる
第6章 その後の織田・徳川・今川氏

という構成で、時系列に従って書かれており、時々刻々と進んでいく歴史がよく判るようにされている。また、文書も平素な書きぶりで読み易いが、かといって小説とは違い、史料の取捨選択を行い、その説明にも言及しているのは「新書」の類としては真摯な姿勢である。

ただ、平素な文脈なのは良いが、やや一般向け過ぎるきらいもある。そして、著者の推定も多く見られる。

一番最初の書き出しが、
「永禄三年(
1560)五月十日。この日、駿府の今川館とその周辺は異様な興奮状態にあった。今川館の主、今川義元がいよいよ西上の軍をおこすことになり、この日、先鋒が出陣していったからである。」
というのが象徴的で、それは事実かも知れないが、何とも物語的である。

このあたりは、読者の好みだろうが、管理人には違和感を否めない。

しかし、本書は桶狭間合戦の書としては好著とも言え、しっかりとした歴史学に基づく同合戦の入門書と成り得るであろう。

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