『三方ヶ原の戦い』

  -戦史ドキュメント-

小和田 哲男 著

学習研究社 刊
270ページ

2000年11月21日(初版) 570

評 価
★★★

著者は1944年静岡県生まれ。早稲田大院卒、静岡大教授。著書に『桶狭間の戦い』『戦国合戦事典徳川秀忠』『明智光秀』『石田三成』『戦国武将など多数。
中世日本史の研究者として著書が多数あり、マスコミへの露出度も高く、この分野では第一人者とされている。

戦国時代の著名な三方ヶ原合戦について述べたもの。

戦国史家として、史料に基づき、学術的に書かれている。また、書き振りも易しく読みやすい。他にも、「信玄の死因」などのコラムも豊富で、興味深く通読することができる。

著書自身が述べているとおり、本書は高柳光寿氏『三方ヶ原戦』の影響を強く受けており、それに続く二冊目の専門書と位置付けられている。

そして、結果として、高柳氏の「局地戦説」ではなく、「上洛戦説」を採用されている。
この差異が(先哲との区別を図るべく新説を打ち出す)意図的なものかは分からないが、「信玄の器量」を理由のひとつとされているのは、主観的すぎて、若干の違和感を禁じ得ないところである。

ともかく、一般向けに読み易いことは確かだが、率直に言って、40年前に刊された高柳光寿氏『三方ヶ原戦』を乗り越えた一冊とは思えないものである。

著者曰く、
「本書を読んだ中学生・高校生の中から、四〇年後に、私の研究を乗りこえた『三方ヶ原の戦い』を刊行する者が出ることを願いつつ筆をおく。」

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