『明智光秀』

 -人物書-

高柳光壽(高柳光寿) 著

吉川弘文館 刊

1958年(昭和33年)9月25日(初版)
299ページ

評 価
★★★★★

著者は、戦国史研究の権威であった。
明治25年生まれ。東大史料編纂官、國學院大教授、大正大教授、日本歴史学会会長などを歴任。昭和44年没。

その研究は、極めて実証的で、予断を持たず、数多くの史料を冷静に分析される。博士の打ち出された新説の多くは、当時は画期的なものだったろうが、現在は通説になっている。

本書は、本能寺の変の首謀者である明智光秀を学術的に研究したもの。
大量の史料を駆使し、例にもれず、実証的な分析が為されている。

著者は記す
「本書は光秀の出身からその死に至るまで、ひと通り彼の伝記を記述したつもりである。しかも史料はできる限り良質のものを選び、いわゆる俗書・末書の類はこれを避けた。ただそれらのうちでも従来一般に事実のように思われている事柄については、すぐにこれを棄てないでひと通りは触れておいた。そしてそれがいかに誤っているかをも記述しておいたつもりである。」

本書は、まさに上記のとおりの内容であり、歴史学というものを教示させられる名著中の名著である。
当サイト管理人も本書に出会い、それまでの”戦国史”の考え方を大きく変えられた。
このレベルの本は、現在でもそうそう出会う事はできない。

 

現在、戦国史研究者として著名な小和田哲男氏(静岡大教授)は、その著『明智光秀』(PHP新書)の中で、本書について次のように述べられている。

”「歴史を研究するとはこういうことなのか」「史料というのはこのように使われるのか」と、いつも、新しい発見があったように記憶している。”

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