『秀吉戦記』

谷口 克広 著

学研M文庫 刊

2001年3月22日(初版)
334ページ 620円

評 価
★★★

谷口克広氏は、1943年北海道室蘭市生まれ。横浜国立大学教育学部歴史学科卒業。横浜市役所勤務などを経て東京都教職員。港区立港南中学校教諭。岐阜市信長資料集編集委員会委員。専攻は日本戦国時代史。
信長と将軍義昭信長と消えた家臣たち』『
織田信長合戦全録』『信長と家康』『殿様と家臣』『信長の親衛隊』など。『織田信長家臣人名辞典』は名著として高く評価されている。

本書は、信長家臣団研究の第一人者の手による秀吉研究の決定版!織田家の小者から部将へ、そして信長後継者の地位を掴むまで、ひたすら任務に邁進し戦国を駆け抜けた秀吉。その怒濤の天下取りの軌跡を徹底検証。従来、後世に書かれた軍記物などを元に語られる事が多かった秀吉出世物語を、徹底した史料吟味で洗い直し、史実としての秀吉の戦歴を子細に抽出。人一倍の精勤さと人心掌握力、状況把握と集中力、それに強運までをも備えた稀代の出世人の実像を、歴史家の視点から描き直す。というもの。

織田信長家臣研究の一人者である谷口氏による書。

天下人・豊臣秀吉の軍記物である。秀吉に関する書籍は多いが、きっちりとした伝記本はほとんど見られない。そのような中で貴重な一冊であり、実証的な文献検証による信頼のおける一冊となっている。

筆致もとても読みやすい名文で、秀吉の人生を知るのにもってこいの書籍である。また著書の専門的な学説も散見され、学術的にも有意義なものであろう。

すでに334ページの大部であるが、残念なのは、「戦記」であって、秀吉の生涯を記していないこと(天下統一で筆を擱いている)であり、その末期までが知りたいところである。しかし本書はネット上で極めて安価で売られており、絶対に損のしない一冊と言える。

著者曰く
天下を平定した後の秀吉には傲岸は為政者の像が目立ち、さらには晩年には誇大妄想や残忍さまで表われて、かつての爽やかさは姿を隠してしまう。思えば秀吉が信長に仕えてから賤ヶ岳の戦いに勝つまでの二十数年間が、だれにも真似できない彼の能力が最大限に発揮された時期だったのだろう。

戻る

城と古戦場