『信長と家康』

  -清須同盟の実体-

谷口 克広 著

学研新書 刊

2012年1月31日(初版)
302ページ 840円

評 価
★★★

谷口克広氏は、1943年北海道室蘭市生まれ。横浜国立大学教育学部歴史学科卒業。横浜市役所勤務などを経て東京都教職員。港区立港南中学校教諭。岐阜市信長資料集編集委員会委員。専攻は日本戦国時代史。
織田信長合戦全録』『信長と将軍義昭』『信長と消えた家臣たち』『殿様と家臣』戦史ドキュメント秀吉戦記信長の親衛隊』など。『織田信長家臣人名辞典』は名著として高く評価されている。

本書は、信義なき戦国時代であっても数多くの同盟が結ばれている。そして、ほとんどが数年後に破棄されているのだ。事情が変われば信義などない。それが戦国の常識だった。ところがその常識がくつがえる現象が一つだけある。信長と家康との間に結ばれた「清須同盟」である。なぜにこのような奇跡とも呼べる現象は起こったのか。いったいこの二人の間にはなにがあったというのか。信長と家康真の清須同盟の実体に迫る。というもの。

表裏比輿の戦国時代にあって、なぜ「清須同盟」が21年間も続いたのか?について解説されている本である。織田家・松平家の勃興から、本能寺の変、小牧・長久手合戦あたりまでが記されている。
基本的には織田信長の通史(通説)であり、ところどころ家康の活動が付記されているという印象である。

しかし、詳しい推考が要所要所でなされており、史料に基づいた信頼の置ける一冊である。書き振りも読みやすく一気に読破できる。
「清須同盟」の長続きは、要は”お互いの利用価値が続いていた”ということらしい。

なお、本能寺の変については、光秀単独説を否定しておらず、最も可能性の高い原因として”四国問題”を挙げられている。

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