『信長と消えた家臣たち』
-失脚・粛清・謀反-
谷口 克広 著 |
中公新書 刊 |
2007年7月25日(初版) |
評 価 |
谷口克広氏は、1943年北海道室蘭市生まれ。横浜国立大学教育学部歴史学科卒業。横浜市役所勤務などを経て東京都教職員。港区立港南中学校教諭。岐阜市信長資料集編集委員会委員。専攻は日本戦国時代史。 本書は、信長は天下統一の過程で多くの配下の者を粛清した。反逆が疑われる者は無論のこと、抜擢に応えられなかった者も容赦なく切り捨てた。なぜ信長は周囲の理解を超えた過酷な処分を行ったのか。一方、趨勢が明らかにもかかわらず、結果的に少なくない数の武将が反旗を翻したのはなぜなのか。着々と進む天下統一の裏で続いていた信長と家臣、そして恭順した大名たちとの駆け引き。その生々しい局面から、信長の戦略と素顔に迫る。というもの。 織田信長家臣研究の一人者である谷口氏による書。 本書には、信長の家臣だけでなく、一揆衆、国人、大名など、織田家との争いの中で没落していった人々が記載されている。史料に基づいた信頼の置ける内容であり、改めて、戦国時代に散っていった人間たちの過酷な生き様がよく理解できる。書き振りも読みやすく、谷口氏の良書のひとつと言えよう。 明智光秀の謀反の理由は次のように書かれている。 結局、家臣を失脚させ、粛清してきた信長であったが、「短気、気まぐれ、傲慢、残忍、他人に厳格すぎること、執念深いこと、猜疑心が強いこと、執念深いこと」などの性格の「欠点」によって、家臣の謀反を招いたとのことである。 |