『長篠の戦い』
二木謙一 著 |
学研M文庫 刊 |
平成12年9月13日(初版) 570円 |
評 価 |
著者は、1940年(昭和15年)東京生まれ。1968年國學院大學大学院日本史学専攻博士課程修了。國學院大學助手、國學院大學日本文化研究所研究員を経て、國學院大学教授。現在、同名誉教授。 その著者が長篠合戦の本を出されるのであるから、当然、学術的で実証的なものが望まれる。 【戦国研究の第一人者が史料を克明に検証し、自らの足で現地を調査し(中略)ドキュメンタリータッチで再現】というのが売り文句だ。 自身でも しかし、合戦の多くは『長篠日記』に従って叙述されている(68頁)。 つまり、実像と虚像が、その区別なく書かれてしまっているのである。 したがって、本書は、学術書としては、まったくその価値を見出すことはできない。 このような本(史料を峻別することなく、通説を紹介する歴史本)は、昭和の頃から多数出版されており、今更、何の意味を為すのか疑問というだけでなく、藤本正行氏らの長年の研究で、その史実が見えてきた長篠合戦の研究を再び後退させかねないものだ。 真実を曲げてまで合戦の詳細を流布させることに何の価値があるのだろうか? 高柳光壽氏の、”「三州長篠軍記」などは最も詳細で、甚だもっともらしくできている。しかし、それだけに実は信用できないのである。” という言が思い出される。 |