関ケ原合戦

戦国のいちばん長い日』

 

二木謙一 著

中公新書 刊
231ページ

1982年2月25日(初版)
740円

評 価
★★

著者は、1940年(昭和15年)東京生まれ。1968年國學院大學大学院日本史学専攻博士課程修了。國學院大學助手、國學院大學日本文化研究所研究員を経て、國學院大学教授。現在、同名誉教授。
NHK大河ドラマの風俗考証を担当し、『
長篠の戦い城が見た戦国史等、戦国時代に関する数多くの著書・監修者もある。

本書は、「戦国でいちばん長い日」、言わずもがな徳川家康と石田三成が戦った慶長五年(1600)関ヶ原の合戦を記したもの。

関ヶ原合戦に関する文献は多数あるが、本書も、通説にしたがって時系列を述べたものであり、特に目を引く内容はみられない。
ただ、コンパクトによくまとめられてはいるので、入門書には適しているかも知れない。

しかし、欲を言えば、史料を厳選のうえ明記し、また各史料の比較なども記述されると良い。そのあたりは新書という制約もあるのだろう。
蛇足になるが、戦国史の権威・高柳光寿氏が『戦国戦記』シリーズとして関ヶ原合戦の執筆を予定しながら、志し半ばに歿されたことが残念でならない。

ともかく本書は、学術的にではなく、一つの読み物として扱うべき書物であろう。

著者曰く、
「材料はできるだけ史料的価値の高い古文書や日記・記録によったが、合戦の推移や戦闘の描写などは、後世の聞書や軍記物語の記述に頼らざるを得なかったところも多い。が、その場合でも、諸書を斟酌し、古戦場を足で辿り、可能な限りの推理を加えた。史料の伝存しない部分、文字に見えぬ歴史の裏面の洞察には、私の想像力を働かせたところもあるが、少しでも史実に近づけるように苦慮したつもりである。」

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城と古戦場