『石田三成 「知の参謀」の実像』
小和田哲男 著 |
PHP研究所 刊 |
1997年1月6日(初版) |
評 価 |
著者は1944年静岡県生まれ。早稲田大院卒、静岡大教授。著書に『桶狭間の戦い』『三方ヶ原の戦い』『戦国合戦事典』『徳川秀忠』『明智光秀』『戦国武将』など多数。 一応、史料に従った歴史学の体を採っているが、実際は、かなり偏った先入観で石田三成が語られている。すなわち、「三成の汚名を少しでもすすぐこと」に腐心されている。 例えば、三成には「計数の才」があり、それによって秀吉に重用され、出世したとしているが、それも【三成が大商業地である近江の出身】だという、心もとない根拠による。 『翁草』『名将言行録』『常山紀談』など江戸時代に書かれたエピソードを紹介しているが、読み進めていくにつれ、それが史実のように書かれてしまっている。さらに、これらを「計数の才」に結び付けている。 これまでの通説を批判するのは悪くないが、一方的な史観でひとりの伝記を記すというのは、歴史家としてはどうかと思う。中立な分析の結果、新説が出てくるというのが妥当な帰納法だろう。 著者曰く、 |