『武田信玄』

-人物書-

奥野高広(奥野高廣) 著

吉川弘文館 刊
305ページ

昭和34年3月25日(初版)
950円(13版)

評 価
★★

 

著者は、明治37年8月兵庫県洲本市生れ。昭和3年8年國學院大學学部卒業。東京大学史料編纂掛に勤務し、『大日本史料』『史料綜覧』を編纂。東京大学史料編纂所助教授、東京造形大学教授、國學院大學講師を歴任。文学博士。平成12年歿。
戦国時代の研究で著名。昭和20年日本学士院恩賜賞を受領。『織田信長文書の研究』は、その後多くの論文・文献で引用される名著である。

本書は武田信玄の伝記としては、古いものであるが、その後に与えた影響は大きいものと思われる。信玄の通史、戦歴を概観し、その人柄、民政、家法や家臣団などについても触れている。

磯貝正義博士は、『定本 武田信玄』の中で、「戦歴だけでなく、権力構造や時代の背景の中で信玄像の把握を試みた、戦後の信玄研究の最高峰」と同書を絶賛されている。

現在では、ややボリュームに欠け、詳細ではないと感じられ、また史料・出典の明記も完璧でないのが残念である。古典として読むべきものであろう。

なお、有名な成慶院の伝・信玄像だが、現在、藤本正行氏の研究により信玄のものではないとほぼ証明されているが、本書では、すでに、この画が「その寿像であることは『本朝画史』の説によるだけである。」と懐疑的な記述を為している。

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