『信長は謀略で殺されたのか
本能寺の変・謀略説を嗤う 』
藤本正行 鈴木眞哉 著 |
洋泉社 刊 |
2006年2月20日(初版) |
評 価 |
藤本正行氏は、1948年生。慶應大学卒。轄ハ陽代表取締役。千葉大、東京都立大非常勤講師を歴任。いわゆる正統派の学者ではないが、その研究は示唆に富み、画期的であり、戦国史を大きく変化させるほど価値のあるものばかりだ。 鈴木眞哉氏は、1936年生。中央大卒。防衛庁、神奈川県に勤務。「歴史常識」を問い直す研究を続け、著書に『偽書『武功夜話』の研究』など多数。 本書は、本能寺の変について、諸説紛々の明智光秀謀反の要因について検討し、特にさまざまに主張される”謀略説”について、それぞれ否定していくもの。 両著者のこれまでの著書と同じく、しっかりと史料に基づいた分析を前提とし、それに当時の文化・常識を加味し、丹念に史実を探っていくという真摯な文献である。出典・史料の明記もしっかりしている。 近年、”謀略説”で注目を浴びた「足利義昭黒幕説」(藤田達生氏)や「イエスズ会黒幕説」(立花京子氏)について完全に否定している。その他、羽柴秀吉、徳川家康、高野山、境商人などを黒幕とする諸説も一蹴にふし去っている。 ともかく、口角泡飛ばすような鋭い文脈で各説を否定しているが、その内容は冷静なものであり、逆にこれら論者の再反駁を期待したいところである。 著者曰く |