『川中島の戦い』

 -戦史ドキュメント-

平山 優 著

学習研究社 刊
上下巻 302+358ページ

2002年6月17日(初版) 651円+683円

評 価
★★★★★

著者は1964年、東京都出身。立教大学大学院修了。山梨県史編纂室所属。山梨大学講師。戦国武田氏を中心とした研究活動を精力的に行なっている。

戦国時代の極めて著名な川中島の合戦について詳述したもので、新書サイズながら、上下巻で650頁を超える大著である。

現在出版されている川中島の戦いに関する文献の中では、もっとも優れた書である。

川中島合戦は、『甲陽軍鑑』の内容が人口に膾炙しているが、その内容に疑わしい点が少なくない。また、その他、古文書などの確かな史料も乏しい。
歴史家・高柳光寿氏も、川中島合戦は信頼すべき史料が少ないことから、その歴史書を書くというのは大変な苦労を要するであろうと述べられている。

本書は、その難題に挑戦したものである。内容は、実に学術的であり、引用される史料も多岐に亘る。ほとんど現存するすべての史料を分析されているのではないだろうか。

とはいえ、史料の制限から、合戦の詳細については『甲陽軍鑑』に依拠せざるを得ないことに変わりはない。
しかし、現地踏査などによって多角的な検証をされており、名著に値する作品である。かなりの大部だが、川中島合戦を知悉することができよう。

著者曰く
「川中島の戦いは、武田信玄と上杉謙信が、関東と中部地方の覇権をめぐって知略の限りを尽くした争乱という本質のほかに、その間に戦国史の帰趨を決めることとなる新たな潮流(織田信長の台頭)を阻むことなく静かに生み出したという意味において、結果的に時代の転換期を象徴する戦争になったと評価することができるであろう。」

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