戦国15大合戦の真相
武将たちはどう戦ったか

 

鈴木 眞哉 著

平凡社新書 刊
252ページ

2003年8月20日(初版) 760円

評 価
★★

鈴木眞哉氏は、1936年生。中央大卒。防衛庁、神奈川県に勤務。「歴史常識」を問い直す研究を続け、著書に『信長は謀略で殺されたのか』『偽書『武功夜話』の研究』など多数。

鈴木氏は、積極的に論文・著作を発表し、戦国史の常識的な事柄を見直す研究をされていることで著名である。

本書も、そのような氏の姿勢の一環として、戦国時代の「15大合戦」について、再評価を加えるものである。その「15大」というのは、桶狭間、川中島、姉川、三方原、長篠、石山・雑賀、木津河口、山崎、賤ヶ岳、小牧・長久手、高松城水攻め、小田原籠城、関ヶ原、大阪の陣と、実に幅広い。

しかし、それゆえに、内容には希薄さが否定できない、著者の得意とされる桶狭間や長篠などはともかく、これらすべての合戦について詳細を研究し、通説を覆すというのは、まず無理な話である。
また、「真相」が、あたかも本書で明らかにされたような印象を受けるが、前々から言われている説も多くあり、すべてが目新しい内容だとは思えない。つまり、色々な研究者の説を総合した記述が多いのである。

これまでの著作で好評を得、それに乗じた出版社に翻意にして執筆を要請されたような、何とも商業的な雰囲気が拭い切れない文献である。

著者曰く、
「戦いについては、川中島や長篠のような超有名な合戦は、もちろん取り上げているが、そうした合戦ほど、実証されていない史実に基づいて語られていることが多い。そこで、それがなぜ事実ではないのか、実態はどうだったのかということに力点を置くことになった。その一方で、これまでの合戦譚ではあまり人気のなかった合戦、たとえば石山や雑賀なども取り上げている。重要な意義を持ちながら、学者も一般の歴史ファンも注目したがらない日の当たらない合戦もあることを知っていただきたいと思ったからである。」

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城と古戦場