『百姓から見た戦国大名』
 

黒田 基樹 著

ちくま新書 刊

2006年9月10日(初版)
222ページ 700円

評 価
★★★

黒田 基樹氏(くろだ もとき、1965年4月 - )は、日本の歴史学者。専門は日本の戦国時代・織豊時代史で、相模後北条氏や甲斐武田氏に関する研究を展開する。東京都世田谷区生。早稲田大学教育学部卒、駒澤大学大学院博士課程(日本史学)単位取得満期退学、「戦国大名と外様国衆」で駒澤大博士 (日本史学)。2008年駿河台大学法学部准教授、2012年教授。千葉県史中世部会編纂委員や横須賀市史古代中世部会編纂委員を務めている(『Wikipedia』)。

戦国史研究の堅実な著作を発表されているというイメージの黒田氏の一冊。

本書は、武田、上杉、北条…数々の群雄が割拠し、しのぎを削った戦国時代。飢饉と戦争で疲弊した百姓は、社会的危機には公然と「世直し」を求めた。生き延びるために、ときに大名の戦争に参加し、また、隣村との境界争いなどにも武具を携えて参集した。いっぽう大名は、百姓に礼を尽くした施策を講じて領国の安定を図った。庶民の視点から乱世期の権力構造と社会システムをとらえなおす。 飢餓と戦争の時代。民衆は大名とどう向き合ったか。自らの存立のためにめぐらせた、したたかな知恵と選択とは? 庶民の視点から乱世の権力構造と社会システムをとらえなおす。 というもの。

戦国時代を、大名の目線ではなく、庶民・百姓のレベルからとらえ直す本であって、これまでと違った戦国史が見えてくるであろう。

しかし、かなりの部分が藤木久志氏の先行研究(雑兵たちの戦場土一揆と城の戦国を行くなど)にとって詳らかにされてきたものであって、重複する印象が強い。

また、「百姓から」というタイトルは、少し言いすぎで、「大名・政府側から」の研究・戦国時代の政治制度の俯瞰と言えるような記述が多く、庶民のみを扱った書籍ではなかった点は、すこし残念であった。

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