土一揆と城の戦国を行く

藤木 久志 著

朝日新聞社 刊

2006年10月25日(初版)
292ページ 1,365円

評 価
★★★

著者藤木久志氏は、1933年新潟県生まれ。立教大学名誉教授。専門は日本中世史。新潟大学卒業。新潟大学では井上鋭夫に師事。東北大学大学院修了。聖心女子大学助教授、立教大学教授、1986年「豊臣平和令と戦国社会」で文学博士。99年立教大を定年となり2002年まで帝京大学教授(Wikipedia』)。特に戦国史の研究で有名である。『日本の歴史』は戦国史を知る好著である。雑兵たちの戦場』の続編。

本書は、「世界各地で広がり続く内戦は多くの難民を生み出している。かつて日本にも同様な時代があった。飢饉で村を捨て、都市に流れ込む。流民たちが武器を持ち、生存をかけて戦う。日本の中世とはそういう時代だった。戦争から平和へ、武具を取り上げた近世の太平は、中世を克服することにほかならなかったのだ。『雑兵たちの戦場』で鮮やかに日本の中世像を書き換えた著者の「戦国を行く」シリーズ第3弾。」というもの。

一級の戦国史家が、戦国時代での雑兵や民衆の生き様を扱った一冊。ほかにあまり目にすることの無い歴史がつづられており大変面白い。そして一級史料に基づいて実証的に記されている。
中世の人びとが、どれだけ貧困に瀕していたのか、どうやって日々を生き抜いてきたのか、そういった生々しい歴史が連綿と記された好著である。

また、著者が虚心坦懐に自説を批判し修正していく姿、他の研究者の説を積極的に明示して採り入れていく態度は、極めて好感の持てるものである。

著者曰く
日本の戦国も「内戦」の時代であった、という厳しい史実と、いま世界に広がる内戦の実情にも思いをはせ、飢餓と戦争に焦点をしぼって、戦国の内戦の世を生きた人々の姿を通して、できだけていねいに語りたかったのである。

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