『真田幸村のすべて』

小林計一郎 編著

新人物往来社 刊

1989年5月10日(初版)
268ページ 2,300円

評 価
★★

編著者・小林計一郎氏は、大正八年(1919)長野県長野市生まれ。長野県史編纂委員、長野郷土史研究会会長、信州短期大学教授などを歴任され、豊富な論文と的確な分析をもつ武田氏研究の大家であった。2009年没。『武田軍記』など多数。

本書は、「温厚・誠実な幸村のあの敢闘は、一族のバックがあればこそ。幸村と彼をめぐるすべてを描く。 」というもの。

戦国時代末期の猛将・真田幸村の伝記本である。

新人物往来社でシリーズ化されている「〜のすべて」の一冊。
このシリーズすべてに言えることだが、共著であるがゆえに、それぞれの研究・執筆スタイルに差異が見られる事、論文の寄せ集めのような形で一貫した記述になりにくい事が難点として挙げられる。

本書も、残念ながら、重複する記事や小説がそのまま掲載されているなど、実証性に乏しい箇所も少なくない。しかしながら、大阪・京都・九度山などの史跡・伝承も記されており、その点は他の書籍には見られない利点である。

また小林氏が「分担執筆のため空白になっている箇所がある」として、それを補うべく、様々なエピソードを載せられて、さすが真田氏研究の重鎮の面目躍如たるところである。

ただ、全体には、真田幸村の史実を追うというよりも、伝説を含めた、総合的な読み物(俗書)というべきものであろう。

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