『武田軍記』
小林計一郎 著 |
人物往来社 刊 |
昭和40年7月(初版) |
評 価 |
大正八年(1919)長野県長野市に誕生した著者。長野県史編纂委員、長野郷土史研究会会長などを歴任され、豊富な論文と的確な分析をもつ武田氏研究の大家である。 本書は、自身で 信玄、勝頼(一部信虎も)の生涯を記しているが、一読しただけでも相当数の史料を用いていることは明らかである。しかし、その書きぶりは平易なもので、大変読みやすい。 「わずらわしい考証はなるべく避ける」という方針ながら(その考証を知りたい気もするが・・・)、必要最低限のところはおさえている。例えば、勝頼の最後を書き綴った『理慶尼記』の引用で、「ただし、この記、後人の作ともいう」と注記を付されている。 このように、甲斐武田氏の正しい歴史を知る入門書としては最適である。新田次郎氏が小説『武田信玄』(昭和63年NHK大河ドラマ「武田信玄」原作)の種本のひとつにしたのも納得だ。 「たとえ軍記物語・通俗史書におもしろい話があっても、確実な史料に従う。事実こそもっとも興味深いからである。」 |