『賤ヶ岳の戦い』

  -戦史ドキュメント-

高柳光壽(高柳光寿) 著

学習研究社 刊
269ページ

1955年(昭和30年)
(『戰國戰記 賤ヶ岳之戰』原刊・春秋社)
1978年(再刊・春秋社)
2001年1月(復刊・学研M文庫) 570円

評 価
★★★★★

著者は、戦国史研究の権威であった。
明治25年生まれ。東大史料編纂官、國學院大教授、大正大教授、日本歴史学会会長などを歴任。昭和44年没。

その研究は、極めて実証的で、予断を持たず、数多くの史料を冷静に分析される。博士の打ち出された新説の多くは、当時は画期的なものだったろうが、現在は通説になっている。

高柳氏の『戦国戦記』シリーズの一冊である。他に本能寺の変長篠の戦、三方ヶ原の戦いが出版されている。(いずれも必読の名著である。)

本書は天正十年(1582)本能寺の変で織田信長が斃れ、山崎の合戦で明智光秀で横死し、その後の覇権を柴田勝家と羽柴秀吉が争った際、翌十一年(1583)近江国から越前国への隘路である北国街道上で行われた合戦を仔細に記述したもの。

例にもれず、大量の史料を駆使し、実証的に分析が行われている。

賤ヶ岳の戦いの合戦、布陣などを詳細に検討・分析した最初のものであろう。
これほどまでの歴史記述はそうそう出会えるものではない。また。その後の北ノ庄で柴田勝家が敗死するまでの過程についても同様である。

ともかく、現在でも賤ヶ岳の戦いについては、本書を読めば、それを知悉することができるし、本書を超える文献は未だに無いと言ってよいだろう。

著者曰く、
「清洲の会議から北ノ庄の落城に至るまでの経過を子細に検討するならば、戦争の勝敗が単に戦闘そのものによるものではなく、そこには政治的な工作が大きな力となっていることを知るのである。戦争は決して戦闘ばかりではない。」

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