『定本 武田勝頼』
上野晴朗 著 |
新人物往来社 刊 |
昭和53年3月25日(初版) 2500円 |
評 価 |
著者は、1923年、山梨県生まれ。歴史家・作家。山梨県立図書館郷土資料室、県立図書館塩山分館長、山梨県文化財審議会委員、NHK大河ドラマ「武田信玄」の時代考証を歴任。 本書は、武田勝頼の伝記本としては唯一の書籍であった。(その後、柴辻俊六氏が同様のものを出版されている。) もっぱら、信玄よりも劣り、猪突猛進で政治力に欠ける武将として流布し、甲斐武田氏の滅亡を呼んだ愚将との評価が多かった武田勝頼を見直す本。史料は、やはり『甲陽軍鑑』が基本となるが、その他にも多数の古文書などを用い、よくここまで調査・整理されたものだと感心させられる。悲哀の武将だけに、読んでいてとても興味深い内容だった。 その出典から疑義のある内容も見られるが、勝頼の通史を記載したものとして大変貴重だ。 また、『甲陽軍鑑』についても再評価を試みている。つまり、その史料性をある程度認め(「歎異の書」として)、積極的に採用している。これについては、近年、同調する学者も散見される。 著者曰く、 |