『中世を道から読む』

 

齋藤 慎一 著

講談社現代新書 刊
236ページ

2010年2月10日(初版)
740円

評 価
★★★

著者は、昭和36年東京都生まれ。明治大学卒、史学博士。東京都歴史文化財団江戸博物館学芸員。著書に『戦国時代の終焉』『中世東国の領域と城館』ほか。

本書は、乱世を生き抜かんとする武将たちの最大の敵、それは自然現象と道路事情だった。積雪、河川の増水。交通を押さえる者が勝利をおさめる。知られざる中世の交通・兵站と情報網に迫る。積雪、河川の増水、険峻な峠…。交通を制する者だけが乱世の勝者となる!というもの。

前半は戦国時代の関東の交通状況を詳しく論説されている。豊富な事例を挙げられて、中世の「道」の重要性を説いている。
遠隔地との往来の困難さがよく理解でき、また利根川の渡河の難渋さや街道の確保について戦国大名がいかに苦悩したのかが解かる。そこには権益も生まれていたようである。

後半では鎌倉へ続く街道・鎌倉街道について論じられている。今とまったく異なる街道が鎌倉時代には存在しており、人々の様々な活動があったとのことである。

本書で、改めて交通の重要性というものを認識させられる。当然、街道には「関所」「切所」があったわけで、さらには城館などの監視施設も配備されている。
中世の交通状況を理解していると、中世史や城郭史がまた違った角度から見ることができそうである。

著者曰く
交通体系の要所要所には専業の者がいて、彼らを管理する人たちがいた。彼らの協力がなければ道は通行できなかった。峠だけではない。河川や一般の街道までも重層的に権利が存在し、その構造は時の領主に結びついていた。

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