『新説 桶狭間合戦』

橋場 日月 著

学研新書 刊

2008年9月22日(初版)
253ページ 740円

評 価
★★★

著者橋場日月大阪府出身、関西大学卒業。日本戦国史をメインに作家活動をおこなう

本書は、織田信長が天下布武へ向けて歩み出す契機となった桶狭間の戦い。強敵、今川義元を圧倒的不利な状況で奇襲により葬り去った。現在そのように説明される通説は本当なのか。諸文献を読み解き当時の織田、今川の状況をグローバルな視点で見つめなおすとき、局所にこだわっていてはわからなかった実相が見えてきた。 というもの。

奇襲説を否定し正面攻撃説を唱える藤本正行氏への反論がメインと思しき一冊である。

桶狭間合戦に至るまでの経緯は、本書の前半を占めているが、こちらは史料の提示も少なく、文内、行間での安易な類推も散見され、史書としてはいまひとつの印象であった。

しかしながら、桶狭間合戦の内容については、かなり詳細に記され、原典の引用も多くなされており、真摯な執筆態度であると言えよう。
藤本氏の”現代人の常識”からの新説(「敵がいつまでも同じ場所に居るはずがない」から正面から攻撃)への反駁として、一定程度の意味を持つ書籍である。

桶狭間を知りたいむきにとっては、一読して損のないものと言えそうである。

著者曰く
『信長公記』は信長の事跡を正確に追うための非常に有用な一級ツールなのは確かだが、それだけを用いてすべてを考えようとすると、生じた矛盾に対して解答が見出せない。」

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城と古戦場