『関ケ原合戦記』

西野辰吉 著

勉誠社 刊

平成6年6月25日(初版)
209ページ 2,060円

評 価

著者西野辰吉氏(1916年-1999年10月21日)は作家。北海道生まれ。足尾銅山変電所の雑役夫、魚河岸の人夫など職を転々とする。1947年、日本共産党に入り、同年『廃帝トキヒト記』で作家デビュー、1956年『新日本文学』に連載した『秩父困民党』で毎日出版文化賞受賞。このころ、霜多正次、窪田精、金達寿たちとリアリズム研究会を発足させ、全国的な組織へと発展させた。1964年、新日本文学会から除籍され、1965年の日本民主主義文学同盟の創立に参加し、その後『民主文学』編集長(『Wikipedia』)。

本書は、天下分け目の関ケ原。西軍の石田三成、東軍の徳川家康。戦いは西軍有利に進行するが、小早川秀秋の裏切りで戦局は東軍へ大きく傾く。家康はついに天下人に…。というもの。

構成は『関原始末記』を現代訳し、それに註解として著者の説明文を追記している。

『関原始末記』は、林道春・林春斎が江戸初期に記したものであり、「記録書として信憑性の高い史料」という評価もあるが(坂本徳一氏)、徳川幕府の時代に書かれたものであり、どこまで真実を伝えているかは疑問も多い。

そして著者の註解も、やはりどこまで史実なのかは疑問であった。原典の明記も皆無であり、あくまでも本書はノンフィクション小説くらいの物語ものであると考えた方がいいだろう。

また、大阪冬の陣、夏の陣についても載せられているが、こちらもドラマとして読むのが妥当であった。

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