『検証・三方ヶ原合戦』

小楠 和正 著

静岡新聞社 刊

2000年3月15日(初版)
222ページ 1,900円

評 価
★★★

著者・小楠和正氏は、1936年浜松市生まれ。静岡大学卒、公立中学校教諭、浜松市立中央図書館非常勤職員、NHK「三方ヶ原合戦」の資料調査に協力、郷土史家。著書に『結城秀康の研究』『浜松城時代の徳川家康の研究』など。徳川家康の研究家としては、浜松市の第一人者とされている。

本書は、三方ヶ原の戦い(みかたがはら・元亀三年(1573年1月25日)、遠江国敷知郡の三方ヶ原(静岡県浜松市北区三方原町)で起こった、武田信玄軍2万7,000人と徳川家康軍1万1,000人(うち織田軍3,000人)との間で行われた戦い。信玄の西上作戦の過程で行われた戦いであり、家康が大敗したことで有名な戦である『Wikipedia』)を史料の面から再検討する著作。

三方ヶ原の戦いについては、すでに、高柳光寿氏の三方原之戦が名著として先行しており、そのほか、これを題材とする専門書も複数出されている。
そのなかで、著者は、改めて史料を整理・検討し、さらに実際に現地を歩いてみて、その信憑性を検証されている。誠に敬服に値する仕事というべきである。また原典の明記も十分であって、専門書としての読み応えは十分である。

地理的な検証が多いことから、合戦のスポット的な検証という面になっている点、かなりマイナーな地名が多く、地図との併載が望まれた点が少々残念であるが、全体に見て、三方ヶ原の戦いを深く知るのに非常に有益な一冊であった。

著者曰く
徳川家康の経験した合戦の中で三方ヶ原合戦ほど「知勇と武略と経験のある名将」と直接戦ったことはなかったといえる。家康は正々堂々と撃って出て、名将武田信玄率いる最強の軍団と死力を尽くして戦ったのである。三十一歳の家康が学び取ったものは大きかったといえよう。日本の歴史としてはもちろん、郷土の歴史にとってもこの三方ヶ原合戦の持つ意義を積極的に評価するようにしたいものである。

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