異説 もうひとつの川中島合戦

紀州本「川中島合戦図屏風」の発見

 

高橋 修 著

洋泉社 刊

2007年3月21日(初版)
197ページ 780円

評 価

著者高橋修氏は、1964年埼玉県熊谷市生まれ。立命館大学文学部卒業。神戸大学大学院文化学研究科博士後期課程中退。和歌山県立博物館学芸員を経て、現在は茨城大学人文学部教授。日本中世史専攻。地域社会における武士団(在地領主)の存在形態について研究するかたわら、「戦国合戦図屏風」に関する調査・研究に取り組む

本書は、「今回発見された「屏風絵」には、通説とは違って謙信・信玄が川の中に馬を乗り入れ、共に太刀を振るう姿が描かれている。さらに細部を検証すると、白兵戦の中で、謙信側の一人の武将が、悠然と陣を構えている姿がある。この屏風絵の中でも、別格扱いの武将は一体誰か?その武将の子孫が、後に紀州徳川家に軍学者として仕官し、殿様・頼宣のもとで、通説とは異なる上杉勝利の「屏風絵」を作ったという。通説が正しいのか?紀州本「川中島合戦図屏風」の説が正しいのか。 」というもの。

まず、本書のタイトルである「もうひとつの川中島合戦」というのは、内容とは即していない。編集部による詐称とさえ思える。
通読すると、17世紀の越後流軍学者・宇佐美定祐や、その息がかかったという『北越軍記』という軍記本が頻繁に登場する。これは、
紀州本「川中島合戦図屏風」の成立に関するものだという。

しかしながら、小生は、「川中島合戦」には関心はあるものの、紀州本「川中島合戦図屏風」には何の興味も無い。
そこから戦国時代の新たな史実が明らかになることもなさそうである。一部『甲陽軍鑑』の成立を検討している記事もあるが、学者たるべき実証性には乏しかった・・・。

そういった意味で、この書を手に取ってしまったのは、時間の無駄でしかなかった。

 戻る

城と古戦場