『浅井氏三代』

人物叢書

宮島 敬一 著

吉川弘文館 刊

2008年2月1日(初版)
289ページ 2,100円

評 価
★★★★★

著者宮島敬一氏は、1948年東京都生まれ。1971年横浜国立大学卒業。1978年明治大学大学院博士課程単位取得退学。博士(史学)。現在、佐賀大学経済学部教授。日本史・近世社会史。

本書は、「北近江を舞台に、亮政・久政・長政と三代にわたる繁栄を誇った戦国大名浅井氏。「国衆」から下剋上して領国支配を展開。小さな戦国大名でありながら織田信長と互角に戦い、軍事的に敗れはしたが、畿内近国ゆえに中央政治史に大きな影響を与えた。北近江の地域社会が生んだ戦国大名浅井氏の足跡から浮かび上がる、新たな戦国大名像とその時代を描く 」というもの。

近江浅井氏(本書では「あざい」ではなく、「あさい」と清音読みが正しいとする)については、「最も包括的で優れている最高の研究書」とされる黒田惟信編『東浅井郡志』(1927年)、現在では批判も多い小和田哲男著『近江浅井氏』(1973年、2005年に増補)があるだけであって、本書はそれに続く貴重な専門書である。

浅井氏は、その勃興から滅亡まで、戦国史に関心があれば、興味をそそられない人はいないであろう魅力的な戦国大名である。本書は、浅井氏を史料に基づいて丹念に追っていった名著である。歴史書の手本とされる東浅井郡志』をベースにしているらしいが、最新の研究も盛り込んだ素晴らしい専門書であって、必読の書籍である。人物叢書の誇るべき一冊と言えよう。

著者曰く
浅井氏三代の歴史は、北近江の「国衆」の中から主家守護京極氏を乗り越え、織田信長と連携して六角氏と対決し、やがて信長に反し、朝倉氏や一向一揆勢力との連合のもと信長に戦って敗れたとされよう。ここではその背後にある戦国社会とどのようなものであったのか、浅井氏三代がどのような権力体系・地域社会秩序を作ってたのかを探って来た。私は、現代の価値観をもって歴史を解釈するのではなく、予断と偏見を捨てて、広い視野・視点から「歴史を学ぶ」ことが大切だと考える。

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