『福島正則 最後の戦国武将

 

福尾 猛市郎
藤本 篤
共著

中央公論新社 刊
188ページ

1999年8月25日(初版) 660

評 価
★★★

福尾 猛市郎氏は、1908年兵庫県生まれ。京都大学卒、山口大学、広島大学、関西大学で教授を歴任。1990年没。主著に『大内義隆』『古文書学入門』など。

藤本 篤氏は、1928年ワシントン州生まれ。山口大学卒。大阪市史編纂所長、大阪人権博物館理事などを歴任。主著に『大阪府の歴史』『なにわ人物譜』『古文書への招待』ほか。

本書は、”賤ケ岳の殊勲で「七本鎗」筆頭と称えられ、華々しい戦功を重ねた福島正則は、武勇一点張りの粗暴な武将とも評される。だがその実像は、義理人情に厚く不器用なまでに一途に生きた人物である。幼少より秀吉に仕え、豊臣家の存続を願いながら、のち家康に与した「変節」も、泰平の世の到来を希求すればこその苦悩に満ちた決断であった。時の権力者から重用されながら戦国時代の終焉とともに凋落の途をたどった猛将の悲劇的宿命を描く。”というもの。

もともと福尾氏が遺された草稿を、その弟子である藤本氏が補綴して脱稿されたものだという。

内容は、しっかりとした歴史学である。史料に基づき、福島正則の生涯、性格、政治など網羅している。

新書のため簡素な記述にはなっているが、福島正則の基本書であり、本書を通説とすべきである。

 

そんな中でも、

福島正則は、粗暴で直情径行・軽挙妄動だが武勇は一級、忠義心に厚く豊臣家を盲信した。

という巷説は、史料上どうも事実らしいというのは、歴史ファンとしては好奇心を煽られる限りだ。

藤本氏曰く、
(福島正則は)「旧誼を忘れず義理・人情に厚く、時世におもねらず、旧来の秩序遵守を旨として、その身に起こったことを聊か(いささか)も恥じない不器用な武士であった。」

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