東葛の中世城郭

千葉県北西部の城・館・城跡

 

千野原 靖方 著

崙書房出版 刊
301ページ

2004年2月20日(初版) 3,800

評 価
★★★★

著者は、1964年栃木県生まれ。本籍地・千葉県市川市。明治大学卒。専門は東国中世史。房総中世史研究所主宰(研究雑誌『中世房総』発行)。
著書に『
房総里見水軍の研究』関東戦国史』『里見家改易始末-房総戦国大名の落日』『国府台合戦を点検する』など多数。

本書は、東葛地方の城館跡について調査し、所在地を確認するとともに、明治時代の地形図をもとに城地の復元を試みている。築城時期や城主など城館の歴史・伝承に関しても可能な限り検証を加え、城と水上交通の関連にも注視されている。

専門家として、実に真摯な一冊である。掲載されている城郭の地理的範囲は広くないが、それぞれの城館について、史料・資料に基づき、極めて詳細な研究が施されている。

かなりマイナーな城砦も載せられており、できうる限り縄張図・概念図も掲げている。また、その所在地が地図上に明記されており、これら城館を訪問するのに重宝する。

ともかく、「千葉県北西部(東葛)」の城館を知るには、本書を上回る書籍は見当たらない。本サイトも同書に負うところが大きい。

著者曰く、
「東葛地方全体の城館跡の特徴的なところをあげれば、そのほとんどが中世には水運で利用できる立地にあったといってよく、陸路と沼・河川路による交通網が台地の間に網の目のように張りめぐられていたのであり、要地には城下町や市場・集落を抱え込んだ惣構の様相を呈した城跡もいくつかみられる。東葛の諸城館と関宿及び古河との関係についても、水路によって軍事・経済両面にわたって密接に結び付いていたと考えねばならない。」

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