『戦国史談』

 

高柳光壽(高柳光寿) 著

叶l物往来社 刊
307ページ

昭和41年10月15日(初版) 600円

評 価
★★★

著者は、戦国史研究の権威であった。
明治25年生まれ。東大史料編纂官、國學院大教授、大正大教授、日本歴史学会会長などを歴任。昭和44年没。

その研究は、極めて実証的で、予断を持たず、数多くの史料を冷静に分析される。博士の打ち出された新説の多くは、当時は画期的なものだったろうが、現在は通説になっている。

本書は、歴史家高柳氏が、『歴史読本』など雑誌・新聞に掲載した読み物を纏めたものであり、研究書ではなく、論文などは載せられていない。

その内容は、「秀吉の経営的才能」「大阪夏の陣」などの“戦国史談”、「源頼義」「木曾義仲」などの“武将小伝”、「中世の日常生活記」「面白いのは古文書」などの“歴史随想”、「頼朝とカカア天下」「北条早雲と鎌倉」などの“歴史片々”と多岐に亘る。

平素な書き振りで小歴史を概観できるとともに、氏の思想や日々の様子などが垣間見られて面白い。ただ、いずれも分量はかなり少なく、こま切れの様な感じである。

著者曰く、
「私も唯物史観的な社会経済史の研究は随分やった。それで日本が自然発生的な国家から有機的な近代国家に発展する歴史を書いてみようとし、現在もそれを続けている。しかしそれはややもすれば人間不在の歴史になりやすい。それで私は人間中心の血の通った歴史や伝記を書いてみた。」

 戻る

城と古戦場/