『戦国時代の終焉』

 

齋藤 慎一 著

中央公論新社 刊
234ページ

平成17年8月(初版)
798円

評 価
★★★

著者は、昭和36年東京都生まれ。明治大学卒、史学博士。東京都歴史文化財団江戸博物館学芸員。著書に『中世を道から読む』『中世東国の領域と城館』ほか。

本書は、豊臣秀吉の全国統一に向け、最後の強敵であった後北条氏が、戦国末期の小田原の役で滅亡するまでの経過を追い、また、これまで一般的に膾炙していなかった「沼尻の合戦」を分析・紹介したもの。

小田原の役について記述した文献は多数あるが、それらはいずれも豊臣軍と北条軍との関係に終始したものばかりで、後北条氏と関東の各大名との間柄について書かれたものは少ない。本書は、その辺りを中心に述べ、史料に基づいた学術的なものとなっており、なかなか興味深い。

後北条氏が滅亡に向け、どのような経過を辿っていったのかを知る一つの好著といえるだろう。

著者曰く
「勝敗のレッテルは為政者など戦国武将に貼られるのみで、たとえ敗軍に属そうとも動員された人びと、そして戦災を被った人びとは、生き延びれば新しい時代が待っていた。戦場に関わった人といえどもひとたび戦争が終われば、その戦争はもう自身の生死に直接的に影響するわけではない。」

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