『武田信玄    
   
-その生涯と領国経営-

 

柴辻俊六 著

文献出版 刊
281ページ

昭和62年12月24日(初版)
1900円

評 価
★★

 

著者は、1941年山梨県中巨摩郡竜王村生。文学博士。1964年早稲田大学教育学部卒。同大学院文学研究科史学専修修士課程修了。早稲田大学図書館勤務。早稲田大学、法政大学大学院、國學院大學、日本大学において非常勤講師。日本古文書学会運営委員・評議員、山梨郷土研究会理事などを歴任した(『Wikipedia』)
甲斐武田氏の研究で著名で、著書が多数あり、また地方誌『山梨県史』『大月市史』『大田区史』『国分寺市史』『甲府市史』『都留市史』などの編纂もされている。

本書は、数多く出版されている武田信玄の伝記本のひとつだが、その中でも彼の生涯と領国経営に絞って記述したもの。

ただし、信玄の生涯(戦記を中心とする)は、もはや多くの学術書に見られる内容であり、本書が特筆できるとは言えない。史料に基づき、コンパクトにまとめられたという印象。
領国経営は、長年、甲斐国の研究をされただけあって、「信玄のかくし湯」など独自のものや詳細な研究も見られる。この一部は『戦国大名領の研究』(昭和56年)を書き改めたもののようである。

いずれにせよ、信玄に関する同様の文献は他にも多く出されており、「武田信玄を知る決定版」とまでは評することができない。また、著者の人柄であろうか、文章がやや固い書き振りでもある。

著者曰く
天下に武名をとどろかせた要因は何であったのか。もちろん信玄自身の人間的な偉大さもあろう。しかしそれは結果からみていえることであって、その要因は別のところに求めるべきであろう。では領国甲斐が地理的自然条件に恵まれていて、彼を大ならしめたのであろうか。この点も従来の通説では全く逆であって、甲斐国は山と谷で平地は少なく、その平地も大河川の氾濫が多く、その上、気象条件も厳しく安定した居住地ではなかったとされている。従って領国発展の要因は、彼を頂点とした組織的な富国強兵策と領国経営が成功した結果とみるべきであって、本書の一つの観点になっている。

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