『信長の親衛隊』

  -戦国覇者の多彩な人材-

谷口 克広 著

中公新書 刊

1998年12月20日(初版)
250ページ 740円

評 価
★★★

谷口克広氏は、1943年北海道室蘭市生まれ。横浜国立大学教育学部歴史学科卒業。横浜市役所勤務などを経て東京都教職員。港区立港南中学校教諭。岐阜市信長資料集編集委員会委員。専攻は日本戦国時代史。
信長と将軍義昭信長と消えた家臣たち』『
織田信長合戦全録』『信長と家康』『殿様と家臣』『戦史ドキュメント秀吉戦記』など。『織田信長家臣人名辞典』は名著として高く評価されている。

本書は、強烈な個性で迅速果敢に中世的権威を否定し戦国乱世を勝ち抜いた信長には、戦場で本陣を固める馬廻や小姓といった強者たちのほかに、秘書や吏僚として治世や文化などの面で活躍する近臣・近従がいたことを忘れてはならない。彼らは職業や出自を問わぬ信長に見出だされ、その才能を惜しみなく発揮し、信長の手足となって献身的におのおのの本分を尽くした。本書は、これら無名に近い近従たちに光を当てながら新たな信長像に迫る。というもの。

織田信長家臣研究の一人者である谷口氏による書。

信長の家臣団構造をよく理解できる上に、特に近臣(馬廻、小姓、右筆)の面々について詳述されている。これまで注目されなかった武士が多く登場する。
そこには、歴史の影で散っていった人々が活写されておて、大変興味深い一冊であった。多くの人間が命を賭けて織田家を支えていた。

また、谷口氏の書であるから、しっかりとした史料分析により信頼のおける内容で、かつ、読みやすく分かりやすい(格好のつけていない)谷口氏の名文といえよう

著者曰く
信長の施策が比較的スムーズに運んだのは、有能で労を惜しまぬ側近が大勢いたからこそである。信長は決して武功ばかりに評価を偏らせる主君ではない。折につけ秘書あるいは吏僚としての才能ある者を発掘し、適材適所に用いることに努めていた。
だが、このような親衛隊・秘書・吏僚などの役割を担った信長の家臣たちは、個人個人を見ると地味な存在にすぎず、それゆえほとんど光を当てられないままに置かれていた。

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