『千利休』

人物叢書

芳賀 幸四郎 著

吉川弘文館 刊

昭和38年5月6日(初版)
350ページ 1,900円

評 価
★★★★

著者芳賀 幸四郎氏は、明治41年1月25日生まれ。東京高師在学中プロレタリア教育運動にくわわる。昭和25年東京教育大助教授となり,39年同大教授。のち大東文化大教授。専攻は中世文化史。人間禅教団を指導した。平成8年8月6日死去。88歳。山形県出身。東京文理大卒。著作に「東山文化の研究」「千利休」「わび茶の研究」など(『講談社 日本人名大辞典』)。

本書は、「“茶聖”千利休の生涯を厳密な史料批判と、鋭い洞察とをもって、時代背景の中に描き出しているばかりでなく、古来のなぞとされる利休切腹の真相に対して、俗説を排し独創的な解釈を施した。歴史家であり茶人でありかつ禅者である著者の、多年にわたる研究成果であり、利休伝の決定版というべきもの。茶道関係者にも必読の書である。」というもの。

(千利休画像・表千家の家元・不審庵所蔵の長谷川等伯筆)


千利休研究は、
桑田忠親氏なしには語ることはできず、とりわけ、名著『定本 千利休の書簡』など大きな影響力を有している。本書もその学績の下に成されている。しかしながら、桑田氏の説にも批判を加え、新しい史料を紹介し、重厚さを持った意義ある専門書である。また利休の辞世の句(遺偈)にも詳しい考証が為されている。

千利休の生涯を知るには、最適の一冊である。人物叢書の誇るべき一冊と言えよう。

著者曰く
千利休は、東山時代以来の茶の湯の先頭を綜合し、これを渾然たる生活芸術、ないし「美の宗教」としての茶道にまで完成した、偉大な芸術的天才である。したがって、彼の生涯の足跡とその業績とを明らかにすることは、日本茶道史の大綱を明らかにすることであり、また茶の湯の理念とするわび―このすぐれて日本的な美の生成過程とその本質とを解明する手がかりとなるであろう。

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