『戦国武田の城』

 

中田正光 著

有峰書店新社 刊

昭和63年4月15日(初版) 1800円
415ページ

評 価
★★★

著者は、昭和21年三重県亀山市生まれ。青山学院大学卒。東京都八王子市丸山町在住。東京都秋川市の小学校に勤務した。

『埼玉の古城址』『秩父路の古城址』など、一部の城郭ファンに名著と評される文献を発表されている在野の城郭研究者。

本書は、武田三代の歴史を追いつつ、それにまつわる城砦を紹介していくというもの。したがって、その範囲は山梨・長野にとどまらず、群馬・静岡などにも及んでいる。

歴史の部分もしっかりと史料に基づいた通史になっているし、城の部分については実際に踏査され、詳細な縄張図が掲載された好著である。また竜ヶ崎城刈谷原城鞍骨城大岡城など比較的マイナーな城が載せられている点も良い。

ただ、その企画は良いのだが、二兎を追った感が否めず、歴史・城のどちらとも片手落ちの様な印象が残る。信州の城郭だけに絞った作品を期待したいところだ。

著者はいう、
「武田氏の城を追うといっても、これは容易なことではない。このことはどの戦国大名にもいえることだが、文献上確認できる城が少ないということはもとより、確認できても他の者たちの手が加えられ改修されたり、あるいは後世破壊されたりということが研究を困難にしている。」

 戻る

城と古戦場